驚異の作り続けて35年! TWO MOONの#92022の魅力に迫る
こんにちわ、LIME ON DISHマネージャーの志手です。
長かった暑さもようやくひと段落。大阪はぐっと気温が下がり一気に季節が進みました。洋服好き、おしゃれ好きは楽しい季節がきましたね。
LIME ON DISHにも各メーカー、ブランドから秋の新作が続々入荷中!目下鋭意撮影などオフィシャルECサイトへの商品UPを順次進めております。
中でも今回は国産カットソーブランドの老舗「TWO MOON」の超定番にてなんと35年もの長きにわたり製作され続けている品番#92022を紹介、その魅力をお伝えしたいと思います。
和歌山産吊り編みスウェット地にこだわるヴィンテージを越えた名品
ニット地を編む旧式の編み機である『吊り編み機』。時間をかけてゆっくりと生地を編む機械なのですが、現在では生産効率の悪さからポピュラーな素材ではなく、日本には和歌山にのみ数台しか存在していない機械です。
機械自体が建物の梁から吊り下げられるように設置されており、重力に逆らわず生地を編み上げていくのが特徴です。またその段階で空気を含みながら生地を形成していくため、現在主流の高速で大量に編める機械よりも柔らかくふんわりとした素材感に仕上がります。また基本的に生地は筒状に編まれ、その筒上のままサイズごとに編み分けた生地を使用し、ヴィンテージライクな丸胴ボディのスウェットを製作したりします。サイズごとに生地幅が決まってくるので洋服を作る際の効率はあまりよろしくはありませんが、それを凌駕する魅力が詰まった素材、それが『吊り編みスウェット』なんですね。
定番カラーの杢グレーの表地は杢感の強すぎないライトカラー。1950年代のスウェットの風合いに非常に似た質感です。
内側に当たる裏面は起毛をかけてフリース状態に。柔らかく編まれた吊り編みスウェットならではのふんわりした肌触りで着心地の良さはもちろん、空気を逃がさない構造で暖かさも確保。冬場のインナーとしても機能性高くしっかり身を守ってくれます。
元々ヴィンテージスウェットの中でも1950年代頃に主流だったスウェットはこういったつくりでした。それは意識したわけではなくその当時のポピュラーであり最先端の製法であったわけで、それを現代において35年もの間再現しつづけているスウェットが#92022なんですね。
生地だけではない縫製仕様にもこだわりが感じられる仕様に脱帽
『4本針フラットシーマー』という耳慣れない言葉。これが生地だけではなく縫製仕様にもこだわる#92022のキーワードです。
シームとは縫い目のこと。それをフラットにするということでフラットシーマー。特殊な4本針縫製ミシンを使用し、生地同士を極力重ねることなく縫い合わせる。縫製部分の盛り上がりが無くなることで縫い目がフラットになり、4本の糸を交錯するように振り糸が通り広めの幅で縫われることによる強度の確保と肌へのごろつき感の軽減へとつながっています。
元々は地肌に着用するアンダーウェア向けの縫製仕様ですが1950年代までのスポーツウェアにはスタンダードな仕様として用いられていました。
それはなぜか?
この時代まではスウェットシャツはどちらかというとアンダーウェアのカテゴリーで地肌に直接着用するのが普通だったんですね。スウェットはスポーツをする際のアスレチックウェアで、この当時はその中にインナーを着るという発想はあまりなかった時代ですね。
TWO MOONはこの当時のシンプル両vクルーネックスウェットをベースに#92022を製作しているので同様の風合いのある4本針フラットシーム縫製にこだわって今なお変わらぬディテールで生産してます。
またネックリブは身生地を挟みこんで縫い合わせるバインダー縫製。こちらもヴィンテージスウェットのポピュラーなディテールですが、着用を繰り返しても伸びっぱなしになりにくいという特性を持っています。長く愛用するには大事なポイントですね。
ちなみに首元の前後にV状に切り返されたガゼットのお話
長年、こちらは『汗止め』として認知されていますが、個人的にはまったく信用していません。汗止めと記載された資料など見たこともありませんし、今風に言うならばエビデンスが全くない。そもそも汗を止める必要があるのか、こんな小さなV状のリブ編みの切り返しで汗が止まるのか甚だ疑問です。これは僕の個人的な予想ですが、『スウェットシャツ』という名称からスウェット=汗と連想し、まだヴィンテージやアメリカンウェアの情報が乏しかった時代にどこかの誰かがそう呼び出したのがきっかけかなと思っています。
では、このV状の前後の切り返しは一体何か?
バインダー縫製で縫われた首元は長く着ていても伸びにくくなるメリットはありますが、逆に脱ぎ着の際に伸びにくく頭を通しにくいというデメリットもあります。なので単純にリブ編地に切り替えることにより伸縮性を高めた、ただそれだけですね。形がV状なのは縫製アクションが2工程で済むためでしょう。洋裁の知識があれば明快にわかることでも昔は不明で、妙な思い込みが定着したヴィンテージウェアにありがちなことだと思います。
35年の長きに渡り不変とブラッシュアップをバランスよく行ってきた名品の現在地
定番カラーであり毎年作り続けている杢グレーとそのシーズン毎にリリースするシーズンカラー。35年目の今年はLIME ON DISHではブラック、インクブルー、グリーンの3色を展開しています。
35年前に生産がスタートしたこちら。1990年という年はファッション界隈はヴィンテージ、国産ヴィンテージレプリカ、裏原宿ブームと多様なスタイルが生まれる頃。1950年代のスウェットのディテールや素材感を再現するコンセプトでいわゆるヴィンテージレプリカとして生産されたモデルですが、2025年の現在もほぼその当時と変わらぬスタイルで一度も途切れることなくリリースされています。
スタート当初よりはより着やすいサイジングへとブラッシュアップを重ねながらヴィンテージレプリカの範疇ではもはや語られることなく、#92022という唯一無二のオリジナルアイテムとして確固たる存在になっている、それが妥協無く作り続けられた#92022の2025年の現在地ではないでしょうか。
国産カットソーの品質の良さをまずは日本人が実感
海外で作られるルックスは似た安価なスウェットよりもその内側にはメーカーの思いが込められ変わらず日本製で長く愛用できる製品を作り続けている。似て非なるその辺のファストファッションとは一線を画す日本のクラフトマンの誇りが詰まった一生愛せるマスターピースをまず日本人である僕たちが実感したいものです。
毎シーズン吊り編みスウェットの生産は量が限られている中でTWO MOONは安定した生地供給を受けながら限定モデルとしてナンバリング入りで生産しています。日本に限られた台数しかない吊り編み機による生地は新規のブランドではまず確保が難しい。それは35年の長きに渡り途切れることなく吊り編み機を稼働させ続けた企業努力の賜物。当初よりも値上げはしていますが、それでも自社縫製工場などの内製化によりコストを抑えているのもこのメーカーの強みでもあります。また目の行き届く範囲で自社生産しているのでクオリティのぶれもなく高い技術力を安定して有することができるのも大きなポイントです。
一度着ていただければ生地、縫製、ディテールの高い融合による高品質な製品であることを実感していただけ長く着用することにより増す風合いや肌馴染みによってコストパフォーマンスの高さに驚愕することでしょう。
35年目を迎える国産スウェットの傑作#92022、今年も良カラーが揃いました。
是非まだこの銘品の未経験の方は一度袖を通してみてください。
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